励まし、励まされ

年の瀬も押し詰まってから、身の回りでさびしい知らせが2件相次いだ。
1件は、33年間やってきたラーメン店の閉鎖。「きょう限りで店をたたむらしい」と知人からメールが入った。寝耳に水。夜11時すぎ、その知人と一緒に店へ駆けつけた。
店内のカウンターは満席。軒先の屋台にまで客があふれ、ラーメンをすすっていた。みんな、どこかで聞きつけて来たのだろう。
詳しくは聞かなかったが、この不況だ。名物おかあちゃんが、ことし36歳になる息子と一緒にコツコツやってきたが、もはや立ち行かなくなったらしい。今宵限りと思い「大盛り」を注文した(写真)。いつもの、すっきりしたしょうゆ味。心して最後の一滴までいただいた。
ラーメンのほか、からあげも名物で、卸元のかしわ屋店主から教えを請われたそうだ。屋台の時代から苦労して作り、育て守ってきた秘伝の味だ。「だれにも教えへんで。わたしが持って死ぬんや」。おかあちゃんが、いつもの大きな声でみんなを笑わせた。
もう1件は、若い女性2人で共同経営していたカフェ。相棒が出産のため続けられなくなり、ひとりで店を維持するのは難しいと判断、閉店したという。3年間だったが、オーガニックメニューで人気を集め、繁盛していた。こちらも無念のリタイアに違いない。
ラーメン店の息子さんは来月から宅配のトラックに乗るという。カフェの女性は、ケーキ屋でパティシエの見習いを始めるそうだ。居心地の良い店が2軒もなくなったのは痛いが、くじけず再出発に挑む若い二人の姿がうれしい。励まして、励まされる思いがした。

【お礼】「ラ党通信」、これにて最終回とさせていただきます。1年半の間、つたない文章にお付き合いいただいたみなさまに、心から感謝申し上げます。