外国人監督の栄冠

とうとう「ひる饅頭(まんじゅう)」まで登場した。京菓子ではない。略称「ひるまん」。プロ野球日本一に輝いた日本ハムヒルマン監督にちなんで作られた札幌の新しい饅頭だ。「これを食べて応援すると勝つんです」と「ひるまん」を買い込んで球場へ向かうファンの姿が、けさのテレビで紹介されていた。
昨年のロッテ・バレンタイン監督に続いて、2年続きで外国人監督が「日本一」の座についた。勝利に沸くグラウンドで、興奮したナインが監督より先に新庄選手を担いで胴上げした。気難しい監督ならこれだけでむくれるところだが、デキサス育ちの青年監督は自ら笑顔でその輪に加わっていた。
バイク入場や阪神ユニホームの着用など新庄選手特有の派手なパフォーマンスも、ヒルマン監督だからこそ許されたものではないか。ぶんぶんバットを振り回した昨季から一転して、犠打を重視する戦術への転換など日本流野球に合わせる柔軟さの半面、ピンチでは勝利記録を目前にした投手を降板させるという非情さも見せた。44年ぶりという快挙はもちろん選手の奮闘によるものだが、硬軟両用でその力を引き出した監督手腕は見事というほかない。
自身にメジャー経験はなく、選手としての現役生活はわずか3年だけ。26歳でマイナーリーグのコーチに入り、1A、2A、3Aと少しずつ上位リーグにはい上がってきたそうだ。選手だけでなく、裏方で働くスタッフまでをも「リスペクト(尊敬)する」という固い信条の裏に、長年の苦労の積み重ねを感じる。
「シンジラレナーイ」「北海道の皆さんは世界一でーす」と明るく答える43歳。外国人監督はサッカーなどにも多いが、ほとんどが自国語でしか話さない。たどたどしいカタコトがかえって新鮮に映る。インタビューにも帽子をとって、きちんと話す。お立ち台から下りると、スタンドのファンに前後左右、腰を折り曲げて深くおじぎを繰り返すスタイルは「日本一」になっても変わらなかった。
ちょっと力がついて名前が売れると、言葉遣いやマナーが粗雑になり、「年俸」や「メジャー」に目が向きがちな昨今の日本選手。そんな気持ちも分からないではないが、苦労人の外国人監督から学ぶことは多いはずだ。