禁煙条例

嗜好品の中でも、たばこほど人によって好き嫌いが極端に分かれるものはないだろう。酒を飲まない人は多いが、他人が飲んでいることまでとやかく言う人は少ない。そこへいくと、たばこは吸うこと自体、他人に害毒を及ぼす元凶として嫌煙家たちから目の敵にされる。
京都市がこのほど、来秋をめどに四条通など人通りの多い繁華街を路上喫煙の禁止区域に指定し、違反者には「罰金」を課す方針を明らかにした。吸い殻のポイ捨ては美観を損ね、火災の原因にもなるほか、歩きたばこは他の通行人に迷惑や危険を及ぼすというのがその根拠だ。
路上喫煙を禁じた条例は、4年前の東京・千代田区を皮切りに、札幌、名古屋、福岡など7つの政令指定都市で施行されている。いずれも罰則付きで、千代田区ではこれまでに2万8000人が摘発されたそうだ。
札幌、名古屋、広島の3市も千代田区と同じく、違反者を見つけしだい罰則を適用しており、名古屋では条例の施行以後、路上喫煙者は四十分の一に減ったという。一方、千葉、福岡など4市は罰則適用を「注意に従わなかった者」に限るなど、ソフトな運用にとどめているところもある。
年間5000万人近い観光客がある京都では、早くも一部で条例制定に異論の声が上がっている。いわく「条例を知らない観光客からも罰金を取るのか」「罰金を取られた観光客の財布のひもが固くなる」…。今のうちに大いに論を戦わせておいてもらいたいが、景観問題や町家保存などと同様、是非の論点がいつも観光客中心になりがちなのが気にかかる。
京都と同じように観光客の多い米国ハワイ州では今月16日から「新禁煙法」が施行され、公共場所が全面禁煙になった。住民であろうが、観光客であろうが、たばこが吸えるのは個人の住宅、ホテルの喫煙客室、刑務所ぐらいといわれるほどの徹底ぶりだ。違反者には、個人には最大50ドル、企業には最大500ドルの罰金が課せられる。日本の旅行代理店には年末年始のハワイ旅行をキャンセルする客も出ているそうだ。
国情も違うから同列に論じるわけにはいかないが、京都も観光客をうんぬんする以前に、市として公共の場での「たばこ」をどう考えるのか。いつまでもケムに巻いたままでは済まされまい。