京都版キッザニア

先週末、京都市が元滋野中学校(上京区)の旧校舎を改築して体験型の「経済学習施設」を開設した。コンビニやデパート、銀行など28の企業・団体が無償で出店、小中学生が店員や消費者になり、電子マネーなどを使いながら経済の仕組みを勉強するという。
昨年オープンした「キッザニア東京」の官製京都版、といったところか。模擬店舗とはいえ、各店とも商標やデザイン、制服などは本物と同じものを用いている。
これらの凝った仕掛けはともかく、最近各地でこの種の「体験学習」がはやっている。当の子どもたちはゲーム感覚で楽しんでいるようだが、背景には、少子化に加えて、企業社会から背を向ける若者の増加に対する危機感があるのだろう。
ただ、気になるのは「経済」の教え方、学び方だ。確かに多様な仕事を知り、お金をもうけたり使うことに対する知識は大事だと思う。その一方で、わが利益や利権を追うあまり不正を働いたり、恥知らずな行いが現実社会で後を絶たない。
接客やレジ操作、家計のやりくりなどは、なにも小さなうちから「体験」せずとも、実社会に出ればいや応なく迫られる。単なる「ままごと」ではなく、学校ではもっと年齢に応じてしっかりと教えておくべき、身につけておくべき物事があるのではないか。
明治の実業家、渋沢栄一の講演録に『論語と算盤』がある。日本資本主義の礎を築いた彼は、商人や経済活動の根本に『論語』の高い道徳性を据えることが重要だと述べている。