名前か、実力か

代表選考会に勝ったのに代表に選ばれない。選ばれたのは選考会での敗者。こんな理不尽があってよいのだろうか。
きのう行われた柔道の全日本選抜体重別選手権。女子48kg級決勝で福見友子選手が、かつての女王・谷亮子選手に優勢勝ちで初優勝した。大会は、9月の世界選手権(ブラジル)の代表選考会を兼ねていた。試合後、1時間半に及ぶ委員会で代表は谷選手に決まった。
代表選考会とはいうものの、もともと選考の基準が、この大会1本に絞られていたわけではない。大きな国際舞台では実戦での経験がモノをいう。世界選手権には来年の北京五輪出場枠(5位以内)もかかっており、結果的に連盟は実力より実績を選んだことになる。
スター好みのマスコミは、谷選手の「ママさん奮闘」にスポットを当て、選考結果には関心が薄いように見える。しかし、5年前に続いて2度も谷選手を破った福見選手にすれば口にこそ出さないが胸中穏やかではないはずだ。
力が伯仲している選手の中から1人を選ぶ難しさはよく分かる。今回勝ったから次も勝つとは限らない。しかし、だからこその「選考会」ではないのか。米国のように選考会での勝者=代表とあっさり決めるほうが公平明朗で、だれにも分かりやすい。
一発冒険か、安全安定か。出るくいは打たれがちだが、無難なだけでは若手は伸びない。スポーツの世界だけでなく、世代交代期を迎えた日本の社会全体にも通じるテーマだと思う。