ふもと屋「とうじそば」

「とうじそば」は信州・木曽を中心とした地方の郷土料理。分かりやすく言えば、そばの「しゃぶしゃぶ」だ(写真1)。
写真上に見える竹編みのしゃもじが「とうじかご」。左端の鉄なべには、熱いつゆが入っている。ざるに小分けされたそばをとうじかごに適量入れて、なべの中で軽くゆがく。おわんにあげた後、つゆを取って一緒に食べる。
かごをつゆの中に「投じる」から「投汁(とうじ)そば」。ここでは、語源をそう説明している。もっとも地域によっては、熱々のつゆにそばをひたすことを「湯(とう)じる」と言い、そこから「湯じそば」とするところもあるらしい。
従業員に教わったとおりの手順でしゃぶしゃぶし、おわんに移す。つゆの具は、ネギ、油揚げ、きのこなど。普通の温かいそばつゆより、いくぶん甘めだ。そばはもちろん地粉を使った手打ち。食感はやわらかいが、歯ごたえはそれなりにしっかりある。
そば粉の粘りにつゆの甘みがからんでうまい。かつて開田の家々では来客をこのそばでもてなしたという。
1350円。他にざる、わっぱめしなど。旅館兼業の店舗は江戸後期の建物(写真2)。黒光りした内部は雰囲気がある。長野県木曽町開田高原末川。

 ※写真のそばは2人前 
★★★★(素朴な里の味わい)