「オレ竜」に異議あり

今から1年前、中日ドラゴンズペナントレースを制した時のこと。旧知である親会社の新聞社幹部に出あい「優勝おめでとうございます。社内も盛り上がってるでしょう」と水を向けたら「そうでもないんですよ。監督があの通りですから」と意外な言葉が返ってきた。
「運動部の連中は弱ってますよ。負けた時は言うに及ばず、勝っても気が進まなければろくに取材に応じない。しぶしぶ口を開いても、字(記事)になることはめったに言わないそうです」。親会社でもこれだ。気難しい監督だと、その時あらためて思った。
その中日が念願の「日本一」を手にした。53年ぶりの快挙というから、地元・名古屋はさぞわいていることだろう。
しかし、全く蚊帳の外にいる身には無関係。そんなことより最終戦で好投した山井投手の「交代」に強い違和感を持った。8回まで無走者、無得点。あと3人で日本シリーズ史上初の完全試合というところで代えられた。
プロは勝ってなんぼの世界−現役時代から銭勘定にたけた落合監督にすれば、そういうことだろう。けさの新聞でも「オレ流結実」「史上初の『完全』リレー」などとそのさい配を評価する声が、OB評論家を中心に多かった。
しかし、そうだろうか。山井投手は多くを語らなかったようだが、その心中は察するに余りある。目の前やテレビの画面で「偉業達成」の瞬間を見たかったファンも多いはずだ。
親会社の彼がいま、どう思っているか、聞きたいところだ。