責任転嫁

船場吉兆大阪市)の商品表示偽装を報じるテレビニュースで、勤め先近くのとり料理店(京都市中京区)が大写しになり、驚いた。よく行く同僚の話では、とろとろの溶き卵のかかった「からあげ丼」が名物だそうで、確かに昼時にはいつも店の前に行列ができている。
この店、実は料理がメーンではなく、明治23年創業の鶏肉専門卸販売が本業だったらしい。良質の「かしわ」で知られ、京都市内の高級料亭にも手広く出荷していたとか。船場吉兆とは10数年前から取引があったそうだ。
今回、船場吉兆の「地鶏すき焼き」などが地鶏ではなく、ブロイラー(若鶏)を使っていたことが発覚。同社は調べに対し「地鶏と思って仕入れていた。業者に抗議したら『地鶏が品不足で、そんしょくのないブロイラーを使った』と言われた」と答えたという。
おさまらないのは、責任をなすられた出荷元だ。かしわ屋店主は「うちは店でも『国産若鶏』を売り物にしている。『地鶏』の言葉など一度も使ったことはなく、言うはずもない。日本一の料理店が取引先だと思い、一生懸命に仕事をしてきたのに」とカンカンらしい。
きのうは船場吉兆のパート女性らが記者会見し、一連の偽装表示について、担当取締役の信じられないような責任の押しつけや強要を涙ながらに証言した。「日持ちするんやで。1カ月くらい延ばし(延ばせ)」「これ(偽装)をしたのは、あんたやで」…。
仕入れ業者にパート女性…弱者への責任転嫁が恥ずかしい。取締役は、虚偽報告書への署名を拒むパート女性に「自分を守る前に、会社を守れ」と怒鳴ったという。こんな会社に、守る値打ちなどあるものか。