バカンスの光景

夏休みでハワイに滞在していた知人が、ブログにこんな記事を書いていた。

「日本の若いカップルがスタバのテラス席にいました、彼女がネットに真剣になっていて、相手は雑誌を黙々と読んでいます。二人でいるのに、それぞれ別の携帯メールを読んでいる光景に似たものを感じました。観光も様変わりといったところでしょうか」

最近よく見かけるシーンだ。せっかくきれいな景色や楽しい場所に来ているのに、なんてもったいない…。でも、ちょっと見方をかえてみたら、どうなるか。パソコンを本に、携帯電話をスケッチブックに置き換えればどう映るだろう。ヤシの葉陰でカップルが静かに文芸書を読みふけっている、あるいは思い思いの風景を写生している…ゆとりたっぷり、なんとおしゃれな二人に見えるのではないか。

20数年前、南太平洋の島国・ニューカレドニアで、テレビも新聞も時計もないホテルに泊まったことがある。フランスに本拠を置くリゾートクラブで、バカンスは日常を忘れてゆったり楽しむべきだというのをポリシーにしていた。

その趣旨には、大いに賛成だったのだが、あいにく着いた翌日から雨、雨、雨。旅程は往復の2日を入れて1週間。滞在日数がどんどん減っていく。

わずかな晴れ間をぬってテニスにプール、シュノーケル、市内観光…元を取るべく、そのあわただしいこと。同宿の西洋人は、と見れば、雨が降ろうが晴れようが、中庭のパラソルの下で読書をしたり、トレーニング室で汗を流したり、工房で草木染めを楽しんだり。休暇の長さもあるだろうが、実にのんびりしたものだった。

天国にいちばん近い島」に来ていながら、日常を忘れるどころか、日常以上にせわしなく、時間に追われていた自分の姿を思い出す。そこへいくと、ハワイの若いカップルの優雅なこと。やっと日本人も本当の「バカンス」を楽しめるようになったのかもしれない。うらやましい。