おじさんの香り

飲みに行った先のスナックで、店内にたかれていた「お香」からニオイの話になった。友人の1人が「最近、よくカレイシュウって聞くよね」。初耳の当方が「カレー臭? 確かにカレー食べた後、においがするけど…」とけげんな顔をしたら「違う、違う。加齢臭。年を取ると特有のにおいを発するらしい。おやじクサイといわれるにおい、アレや」と教えてくれた。
へえ、知らなかった。一緒にいたもう1人の友人もうなずいていたから、どうやらこの言葉、広く知られているらしい。なんでも資生堂の研究所が突き止めた体臭成分で、青臭さと脂臭さが混ざったようなニオイ。聞いただけで鼻の奥がムズムズしてきそうだが、男女とも40代以降にこの成分が増え、中高年特有のにおいとされているそうだ。
ふだん中高年にびっしり囲まれた職場にいるが、そんなにおいはとんと感じたことがない。そう言うと、友人から「そら、あんたもそうだから。自分がニンニクを食べていると、他人のニンニクのにおいが気にならないのと一緒」とやり込められた。
においを感じる度合いは人によって、まちまちだ。ギョウザはともかく、そばやラーメンに入っている刻みネギのにおいさえ嫌う人もいる。デパートやドラッグストアでは、口臭や発汗を抑える薬剤やグッズが花盛りだ。
この夏、男性向けにかむだけで体からバラの香りを発するというガムが売り出され、話題を呼んだ。その名もずばり「オトコ香る」。中年男性を中心に人気を集め、生産が追いつかず品切れ続出の大ヒットになった。気をよくしたメーカーは、今月末からガムだけでなく、食べると体からバラやバニラの甘い香りが発散するというソフトキャンデーの発売も始めた。
それにしてもバラの香りがする男って、気持ち悪くないかなぁ。程度にもよるが、汗のにおいのほうが自然だと思うけど。不評の「おじさん臭」にしても、においだけの問題ではなかろう。食堂からゾロゾロ、つまようじをシーシー、ワイシャツの腹を突き出し、モードばきでペタペタ、たばこプカプカ…それで体からバラやバニラが漂ってきてもねえ。