出直せ、京都市

職員不祥事の相次ぐ京都市が、今月から内部の懲戒基準を改定した。市は「全国の政令指定都市で最も厳しい基準にした」と言っているそうだが、その中身を見て驚いた。
新しい基準では、これまで最高でも停職にとどまっていた暴行や賭博、痴漢行為を免職にまで引き上げたほか、従来は処分項目になかった虚偽文書作成や脅迫、住居侵入、無免許運転なども新たに処分対象とした。停職以上の処分は氏名も公表するという。
「厳しい」どころか、一般の常識に照らせば、当たり前のものばかりではないか。むしろ暴行や賭博、痴漢といった犯罪行為が、これまで停職にとどまっていたこと自体、不思議なくらいだ。公務員たるもの、まさか脅迫や住居侵入などは想定していなかったのかもしれないが、文書偽造や無免許運転が処分の対象外だったというのにもあきれるほかない。
京都市では、覚せい剤使用をはじめ、生活保護費の詐取やサラ金のATM荒らし、傷害など不祥事が続発、今年4月以降だけで10人もの職員が警察に逮捕されている。異例の臨時市議会まで開かれ、管理監督責任を怠ったとして桝本頼兼市長の減給50%(6カ月)をはじめ、特別職、幹部職員77人の処分が発表になった。不祥事の再発防止、綱紀粛正へ向けて、58項目からなる「抜本改革大綱」も作られた。
かつて京都市役所は、内部同士や外部との「なれ合い体質」を皮肉って「御池産業」(庁舎が御池通に面している)と呼ばれ、その「社員」像は「立てばパチンコ、座ればマージャン、歩く姿は馬券買い」と陰口をたたかれた。桝本市長は繰り返し「解体的改革」を口にしているが、こうした市民の強い不信感を覆すのは容易ではない。
不祥事が次々と明るみに出る中、知り合いの市職員からこんな電話がかかってきた。「一生懸命やっている者まで同じように見られて悔しい。どうしたら、よろしいやろ」。まじめな彼が気の毒に思えた。残念ながら近道はない。派手な掛け声やポーズは不要。職員の一人ひとりが自分の問題として受け止め、見えないところで誠実に職責を果たしていくしかないと思う。