ぼやき着信音

プロ野球楽天イーグルス野村克也監督の「ぼやき」が、携帯電話の着信音になるそうだ。新聞記事によると、球団の公式携帯サイトの有料会員(月315円)向けのサービスで、「ナイスショット!」「ぼちぼちでんな」「野球ってのは分からんもんだなぁ」といった野村監督の声が、着信のたびに携帯から流れるそうだ。
以前、病院の静かな待合室で突然「おとうさん、おとうさん、起きてくださいよっ!」という女性の声が響いて、びっくりしたことがある。中年男性があわててポケットから携帯電話を取り出して、廊下の隅の方へ走っていった。電話か、メールか分からないが、その着信音だった。
携帯電話には、あらかじめ電子音や音楽などいろいろな着信音が設定されている。中には好きな曲をダウンロードできる機種もあり、若い人らに受けている。電話会社もこれに目をつけて、あれこれ知恵を絞っている。「電話かかってまっせ」「メールやでぇ」などという関西弁バージョンまであるが、これなどは満員電車の中で鳴ると恥ずかしい。
それにしても、さすがは楽天だ。野球が弱くても、いろいろな商売を考えるものだ。高給の監督をグラウンドだけで働かせておくのはもったいない、とでも考えたのだろうか。
野村監督は、京都府北部の峰山高出身。南海のテスト生からはい上がり、戦後初の三冠王にまでなった努力の人。でも、あんまり好きになれない。あのノッソ、ノッソとした動作、ニックネーム「ムース」の語源になったとも言われる「ムスッ」とした表情、そして相手のみならず自軍の選手に対しても容赦のない皮肉、ぼやき…。
といっても、その采配や鋭い野球分析には定評がある。時折、見せる子どもっぽい笑顔を見ると、グラウンドやベンチでの所作や言葉もちゃんと計算済みのことかとも思える。
とまれ、この着信音、球団の思惑どおりに受けるかどうか。少なくとも、楽天ナインからは敬遠されるに違いない。だって、仕事以外の場にまであの「ぼやき」が聞こえてきたら、いくらプロでも気の毒すぎる。