よけいなお世話

結婚式披露宴のスピーチでよく耳にする言葉がある。「1日も早くご両親に元気なお孫さんの顔を見せてあげてください」。これを聞くたびに不快に思う。もし、このカップルに将来、子どもができなかったら、どうするんだ。当人は祝辞のつもりで言っているのだから悪気はないのだが、無神経だと思う。
結婚式からしばらくすると「お子さんはまだ?」、親には「お孫さんは?」。これも多い。あいさつ代わりなのだろうが、よけいなお世話だ。子どもが要らないと考えているカップルもいれば、ほしくてもなかなかできない夫婦もいるだろう。悪意がない分、たちが悪い。「できました」とでも答えたら、今度は「男? 女?」。いい加減にしろ!
けさ、皇族のカップルに3人目の子が誕生、「皇室に41年ぶりの男子」とマスコミは大騒ぎだ。皇位継承順位が第3位、将来天皇にもなる可能性があるのだから、社会的な関心が高いのは当然だ。それなりの報道は必要だろうが、テレビのどこのチャンネルを回してもこれしかニュースがないといわんばかりのフィーバーぶりには感心できない。週後半からこれに週刊誌が加わるだろうから、先が思いやられる。
暗いニュースが相次ぐ中、皇室の慶事は明るくめでたい話題だ。それはそれでよいのだが、ちょっと周囲に目を配れば別の思いも浮かんでくる。待望久しかった長男夫妻の子は女児だった。一時は、女帝の歴史をひもといたり、皇室典範の改正まで論議を呼んだが、今回の男児誕生で急速に熱がさめそうな雲行きだ。
神聖不可侵だった戦前の皇室に比べると、「菊のカーテン」も徐々にではあるが、開かれつつある。民主国家なのだから当然だが、時にはプライバシーすれすれの際どいものまで好奇の目にさらされるから皇族も大変だ。これで長男一家がこれまでの重圧から解放されるのであれば幸いだが、そう単純に割り切れるかどうか。これ以上「よけいなお世話」は慎みたい。