テレビの時間差

職場に複数のテレビがあり、ほぼ終日かけっぱなしになっている。ある日、ふと気づいた。テレビによって「時間差」があるのだ。同じ野球中継がかかっていて、一方のテレビでは打者がヒットを打って走っているのに、もう一方のテレビではまだ投手が投球動作に入ったところ。その打者はまだバットを振っていないのだ。
この手の情報に詳しい同僚に尋ねたら、それはアナログ放送とデジタル放送の違いだという。野球中継で言えば、ほぼゲームの進行と同時に映像を電波にのせて送信、受信側のテレビもそのまま受像できるアナログ放送に比べ、デジタル放送では映像をいったんデジタル信号に変換、圧縮して送信、受信側ではそれを解凍して映像に再変換する必要がある。その間に数秒間の時間差が生まれるらしい。
そう言われても、生来のアナログ人間に詳しい仕組みが分かるはずもないが、デジタル放送では電子レンジで「チン」するような手間が余分にかかるらしいと理解した。職場のテレビを見比べていたら、その差は3、4秒。今後、その圧縮−解凍技術の進歩で時間差は少しずつ短縮されるはずとのことだった。
調べてみるとこの問題、ネットなどでは早くから取り上げられていたようだ。NHKでは、すでにデジタル放送での時報を取りやめているという。画面の隅に小さく表示している時刻もデジタル放送への切り替えとともに姿を消すだろう、といったことも書かれていた。
そんな中、先日、国際電気通信連合が「うるう秒」を廃止して「うるう時間」に変更するとのニュースが報じられた。地球の自転が24時間よりわずかに長いことから生じる時刻のずれをこれまで何年かに1度「うるう秒」として1秒を加えて調整していた。それをまとめて数百年に1度「うるう時間」として1日25時間にしようということらしい。
これまたややこしい話だが、1秒がそれほど大きな意味を持つ世界がある一方で、先端デジタル技術の放送界で生じる数秒の遅れ。ただ時報を消せばよいというものでもないと思うのだが、どうだろう。朝の忙しい時間帯、テレビを時計代わりにしている家庭の多いことも考えてもらいたい。