卍考〜その1

8月20日のコラム「変わる地蔵盆」の写真を見た他府県の方から「京都の地蔵さんには、みんな卍(まんじ)紋が入っているのですか」とのお尋ねをいただいた。京都の者にとっては、これまで当たり前のようにお地蔵さんには付きものと思っていた「卍」のマーク。その後、気になって、出歩くたびに携帯カメラを手にあちこちのお地蔵さんをのぞき込んでいる。
まだ「調査」の範囲は、自宅周辺の北区、上京区が中心だが、これまでにざっと20ほどのお地蔵さんを見て回った。このうち、2カ所のお地蔵さんには見当たらなかったが、他はすべて「卍」紋が施されていた。
と言っても、その付いている位置やデザインはまちまちだ。色ひとつを取っても、赤もあれば白もある。黒もあれば、金色も。線の太さも同様に、極太のものから細い線までいろいろ。付いている場所は、ほこらの台座が最も多いが、扉や格子、幕、ちょうちんのほか、屋根の破風に刻まれているものもあった。実に多種多様、とくに決まりのようなものはないらしい。
地蔵盆は、お地蔵さんの縁日にちなんで8月23、24日に行われるが、似た行事に「大日さん(大日盆)」がある。これも京都では、お地蔵さんと同じようなほこらに「大日如来」がまつられ、縁日に合わせて8月27、28日に行われる。地蔵盆と同じくお寺さんのおまいりやおやつ、福引などがあり、その前で子どもたちが遊ぶ。子どもにとっては「第二の地蔵盆」みたいなものだ。
大日さんのほこらも4カ所ほどのぞいたが、こちらには「卍」がない。1カ所、お地蔵さんと大日さんが「同居」しているほこらがあったが、ここには屋根の上に「卍」があった。また、別の大日さんでは、近くのお地蔵さんから「借用」してきたと見られる「卍」入りの水入れが供えられていた。しかし、基本的に「大日さん」のマークは、丸い「宝輪(ほうりん)」。「卍」は、やはりお地蔵さんのものだ。
ところが調べていくうち、意外な「卍」に出合った。逆「卍」。子細は、次回に。
        
【写真】多種多様な卍(いずれも京都市内)