がんばれ「笑店街」

京都市上京区西陣千本商店街が、面白い試みをしている。名づけて「笑店街(しょうてんがい)」。京都嵯峨芸術大の学生たちの提案で、商店街の店先に店主や従業員の笑顔の写真を掲出、買い物客や通行人に親しんでもらおうという企画だ。
商店街には約80店が加盟しているが、約半数の37店が賛同した。各店とも学生に撮ってもらったポスター大の顔写真を玄関ドアやショーウインドーなど目の引きやすい場所に張り出して、文字通り笑顔で道行く人にアピールしている。
千本中立売、通称・千中(せんなか)を中心とした「西陣京極」は、われわれが子どものころから楽しい繁華街だった。映画館に遊技場、飲食店はもちろん、服も靴もおもちゃも何でもここでそろった。休日に家族そろってにぎやかな商店街をのぞいて歩くのを、東京の「銀ぶら」になぞらえて「千ぶら」と言った。デパートや高級店が並ぶ四条や河原町にはない庶民的な気安さがあった。
大型店の進出、ファストフードの流行、コンビニの普及などで、いまはどこの商店街も客足のつなぎとめに四苦八苦している。いち早くアーケードを取り付け、通りに音楽を流し、歩道をカラー舗装してきた千本の商店街も例外ではない。今では看板を下ろしたり、コイン駐車場などの「歯抜け」も目立つ。
この時代、小さな商店街が大資本のスーパーや量販店と競い、かつてのにぎわいを取り戻すのは至難のことだ。と言って、嘆いてばかりいても始まらない。「笑店街」の試みには、常に他と違うことをやろうとしてきたこの商店街の気概がうかがえる。
笑う門には福来たる。顔写真の掲出は24日までの期間限定らしいが、提案した若者らも巻き込んで明るい笑顔の街になれば、と願う。
  
【写真=店先に張り出された「笑顔」の写真(京都市上京区)】