新総裁への注文

朝のテレビで「ポスト安倍」という言葉が飛び交っていた。まだこの段階では「安倍総裁」さえ決まっていないのに、もう安倍氏の後継かとやりとりを聞いていたら、「安倍新内閣」の大臣のいすを巡る顔ぶれ予想のことだった。
英語の「post」は、同じつづりでもいろいろな意味がある。一番ポピュラーなのは郵便、郵便入れ。次いで地位、持ち場、役職。さらに「postwar」(戦後)のように前に付くと「…後」となる。他に「The Washington Post」「週刊ポスト」のように新聞・雑誌名の「…紙・誌」にも使われる。
テレビの「ポスト」は「安倍内閣の閣僚ポスト」と言うべきところを、前に付けるから「安倍後継」の誤解を招いたわけだ。あるいは、安倍内閣の「短命」を見込んでの皮肉かとも思えたが、うがち過ぎだったようだ。
午後からの投票で、予想通り安倍晋三氏が自民党の第21代総裁に選ばれた。麻生太郎谷垣禎一両氏を大差で抑えての圧勝だった。26日の衆参両院本会議で首相に任命され、正式に新内閣が発足する運びだが、総裁選の期間中から閣僚ポストを巡って自薦、他薦の激しい「猟官運動」が繰り広げられたらしい。
早々と安倍氏大勝の観測があったから、われもわれもと勝ち馬に群がったのだろう。「末は博士か大臣か」の言葉通り、政治家を志した以上、大臣の座に引かれるのはやむを得まい。どこの世界にも、地位や肩書に無類の関心と執着を燃やすやからがいる。人間である以上、ある程度の「欲」があっても当然だと思うが、なりふり構わぬすり寄りや画策は恥ずかしい。
通常、新内閣発足に先駆けて幹事長など党三役の人事が行われる。今回も当初、総裁選出直後の20日に見込まれていたが、こうした猟官運動の「雑音」封じのため、国会前日の25日まで先送りされる見通しという。
総裁選で安倍氏は繰り返し「美しい国日本」の創出を強調した。その意気やよし。まずはその前に、美しい閣僚選びを注文しておきたい。