ATMに異議あり

東京スター銀行の「無料ATM」が他行の反発を受けて、11月から有料になるらしい。普通、ATMで他行のキャッシュカードを使うと平日昼間で105円、夜間・休日なら210円の利用手数料が取られる。「無料ATM」では、平日昼間ならそれが要らないというのだから、利用者が増えるのは当たり前だ。スター銀の肩を持つわけではないが、他行の反発は「無料ATM」に対する「いじめ」のように見える。
もちろん、他行にもそれなりの言い分がある。ふつうA銀行の顧客がB銀行のATMを利用した場合、ATMの運営・維持コストとしてA銀からB銀に一定の手数料を支払う約束になっている。各行ともそれを顧客に転嫁しているのが、いわゆる「利用手数料」だ。
スター銀はもともと手数料を取っていないから、自行の客が他のATMを利用することは少ない。逆に、他行の客が「無料」に引かれて利用しに来るケースは多い。スター銀にとって、利用者の流出が少なく流入が増えれば、それだけ相手先の銀行からの受け取り手数料が増えることになる。
他行はこれを「不平等だ」として、三菱東京UFJは自行の顧客がスター銀のATMを使えないようにする強硬策を検討中という。「無料ATM」は、大垣共立銀行三重銀行などでも実施しており、同種の問題が起きているそうだ。
激しい顧客獲得競争にしのぎを削る銀行間の対立は分かるが、利用者の側からすると、もともとATMの手数料には納得できない点が多い。本来自分の預金をおろすのになぜカネが要るのか。銀行は、ATM化で窓口の人件費や事務処理の手間が省けて得をしているはずだ。利用手数料どころか、機械化で浮いた分を利用者に還元すべきだ…とさまざまな不満の声がある。1万円を1年間預けても利息は100円もつかない超低金利の下で、他行の機械だからとか時間外だからとかいう理由で利用のたびに100円も200円も「手数料」を取られてはたまらない。
大手銀行による「強硬策」の包囲網を前に「無料ATM」は風前のともしびだ。ここは利用者側からもっと大きな声が上がっていいと思う。銀行間の差が「不平等」だからといって、元の高い手数料に足並みをそろえるのは筋違いだ。「平等」と言うなら、全行がそろって無料化、または最小限の運営・維持費に引き下げるべきだろう。手数料高止まりの「談合」を許してはならない。