組閣雑感

安倍内閣が発足した。記者会見で新首相は「活力とチャンスにあふれた国にしたい」として、自ら「美しい国づくり内閣」と命名したそうだ。
「再チャレンジ担当」などと、カタカナ表記の大臣は初めてではないか。リストラされた人などの再挑戦を支援する施策を立案、推進するという。その趣旨や言葉の響きはよいが、「格差社会」是正という難題に「チャレンジ」しなければならないのはむしろ内閣、政府のほうだろう。
前内閣で沖縄・北方・少子化男女共同参画担当相を務めた猪口邦子さんは、辞任にあたって記者から自己採点を求められて「95点」と答え、感極まったようにハンカチで目頭を押さえた。その後任に就いた高市早苗さんも感想を聞かれて目をウルウル。だから女は、なんて言う気はないが、一国の大臣が涙を流すのはもっと別の場があるはずだ、と思わずテレビに向かってほえてしまった。
米国のホワイトハウスにならったという「首相補佐官」を定員いっぱいの5人も置いた。「チーム安倍」と呼ばれる官邸主導型の政治スタイルを目指すらしいが、小泉前首相でさえ手こずった族議員や省庁のしぶとい権益、権限擁護の壁を突き破れるかどうか。
課題山積の新内閣だが、閣外からは冷ややかな評価が聞かれる。野党からは「戦後否定内閣」「愛国心内閣」「改憲内閣」、身内の自民党の中からも「仲良し内閣」「学園祭内閣」などと皮肉る声が上がっている。野党は新内閣の保守色を危ぶみ、与党の中にも総裁選での論功行賞と見て快く思わない向きが少なくないのだろう。どちらにせよ、これからお手並み拝見ということになる。
面白かったのが、入閣要請の電話を受けた議員の応対だ。「光栄に存じます」。ほとんどの人が申し合わせたように電話口でそう答えていた。「承知しました」では出前の注文受けのようだし、「分かりました」では受け身すぎる。さりげなく「光栄です」と言えば、聞こえもよい。なるほど勉強になった。今度、会社の人事で内示を受けたら、これで行くか。ただし、異動の中身によっては嫌みになるが。