迎賓館通り

京都御所の西、烏丸通今出川−丸太町間を「烏丸迎賓館通り」と呼ぶのだそうだ。先日、烏丸通の西側歩道を歩いていて、初めて知った。ホテルや神社、商店などの軒先にポツン、ポツンとこの通り名を書いた標柱が立っている=写真=。
平安京の烏丸小路にさかのぼる由緒ある「烏丸通」の名前があるのに、なんで今さら「迎賓館通り」なのか。そう思って調べたら「烏丸迎賓館通り会」なる組織まであるらしいことが分かった。
京都御苑の中につくられた京都迎賓館については、建設前から市民の中に賛否両論があった。会は賛成の立場から、御所に面した烏丸通の歩道沿いにある企業や神社など約30の団体、個人で結成、迎賓館の開館に合わせて昨年4月から標柱を会員の敷地に掲げているようだ。迎賓館の完成を祝い、一般市民や観光客らにその存在をアピールしようとの意図なのだろう。
碁盤の目に走る京都の通りには、それぞれ固有の名前が付いている。名前のない短い路地や商店街には、地元で「通称」が付けられる場合もある。伏見区と中京区には「竜馬通り」という同じ名前の通称通りがある。双方とも幕末の志士・坂本竜馬が身を寄せた宿が近くにあることから、その人気にあやかっての命名で、関連グッズを販売する店が並んでいる。
堀川通の中立売−下立売間の西側歩道も「晴明神社堀川参道」と呼ばれている。北へ300mほど離れたところに平安時代陰陽師安倍晴明を祭る晴明神社があることから地元商店街がそう名乗っている。ここでも陰陽師ブームに便乗する形で、神社のシンボル「五芒星(ごぼうせい)」をあしらったみやげ物などが売られている。
「まる竹えびすに押し御池…」とわらべ歌にまで歌われている京都の通り名は長い歴史を持ち、市民の暮らしに溶け込んでいる。一方、昨今の通称通りには、どこか取ってつけたような違和感がぬぐえない。それも商店街の活性化などに使われているのならまだしも、「迎賓館通り」のようなものまでが本当になじむのかどうか。任意団体が自分たちの負担でやっているのだから、外野が目くじら立てることもないが、最近の市町村合併で誕生する新市名と同じく、なにか地名が軽々しく扱われているよう思えてならない。