すし良「上にぎり」

かかりつけの鍼灸院で「小浜にうまいすし屋がある」と聞き、さっそく車を飛ばした。京都から大原、花折峠を越えて朽木、熊川…かつての若狭街道を北上、1時間余りで約80km離れた福井県小浜市に着いた。
教えられたとおり小浜城跡を目印に、小浜湾口の三角州を抜けた住宅地の一角に「すし良(よし)」の看板が見えた。白木造りの立派な外観=写真右=、駐車場が広い。週末の昼下がり、地元らしき客が1組だけだったが、ふだんは京都や滋賀から口コミでやって来る客が多いそうだ。
メニューは、基本的に上にぎり(3000円)=写真=、並にぎり(2000円)の2種類。どちらも12カンだが、ネタの種類が違う。他に各種細巻き太巻き、煮物、焼き物など。
横一列に並んで出てきた上にぎりは壮観=写真左=。いくら、うに、あなご、きす、小だい…北陸自慢ののどぐろも。くるまえびは、シャリの上でまだピクピク動いている。
小浜漁港に近く、魚市場から仕入れたばかりのネタはどれも新鮮。ふつう1人前といえば8カンぐらいが相場だから、5割増のボリュームだ。その分、シャリは小さめだが、それでも小食の人には多いだろう。
量と値段のバランスから見て、評判を取るだけのことはある。味も雰囲気も並以上に違いない。ただ、いつも食べる京都のすし、たまに行く東京のすしに比べると、どこか物足りない。口の中で広がる味の「深み」とでもいうのだろうか。
その正体を考えながら食べた。わき役としてのシャリに存在感がない。のりにももっとパリッとした威勢のよさがほしい。むずかしいものだ。海に近い=新鮮なネタ=うまいすし、とは限らない。すしの奥深さをあらためて感じた。
三船敏郎似という名物がんこおやじさんの顔を見られなかったのは、残念だった。
     
★★★(ボリューム満点、リーズナブルな値段)