出町ふたば「豆餅」

京都の和菓子でも有数の知名度を誇るのが、出町ふたば京都市上京区)の「豆餅(まめもち)」だ。1個160円。もともと普段に食べる餅だが、口コミからネットへ広がり、いつ行っても店の前に長い行列ができている。
土日ともなればガイドブックを手にした観光客がタクシーやマイカーでわんさかと押し寄せる。中には「ふたば、くださーい」なんて注文する人も。店の名前も商品名も分からず、とにかくやって来たのだろう。
こんな調子だから、地元に住むわれわれの口にもなかなか入らない。写真の豆餅は、ご近所の奥さんからいただいたもの。「店の前を通りかかったら、珍しく列が短かったので買えた」そうだ。
もち米で作った生地はやわらかな「赤ちゃんのほっぺた」にたとえられる。塩味のきいた赤エンドウ豆が、こしあんの甘味を引き立てる。
創業1899(明治32)年。素材にこだわり、その年々の出来に応じて良い材料を各地から集め、昔ながらの製法で作り続けているという。庶民のまち・出町がはぐくんだ「普段」の味が、いまや「よそいき」になってしまったのが、地元の者としてはちょっとくやしい。他に赤飯、季節に応じて桜餅、栗餅などもある。
 
 ★★★★★(素材を選んだこだわりの味)