がんばれ、チャルメラ

チャルメラ」などで知られる即席めんの明星食品が、買収騒動で揺れている。
先月末、筆頭株主の米国系投資ファンドから敵対的なTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられ、一気に企業買収のピンチに立たされた。この窮地に「白馬の騎士」(ホワイトナイト)としてさっそうと現れたのが業界最大手の日清食品チャルメラおじさんにチキンラーメンが救いの手を差し伸べた格好だ。
1昨年あたりから「TOB」だの「白馬の騎士」だのといった言葉が、新聞の経済面をにぎわせている。ライブドア村上ファンドの事件を機に、すさまじいマネーゲームや企業買収劇が白日の下で取りざたされるようになった。当たり前のことながら、企業側も株式を公開している以上、自社株の動きにうかうかしておれない。
即席めん業界は、日清食品(40%)、東洋水産(19%)、サンヨー食品(12%)、明星食品(10%)、エースコック(8%)の5強がシェアの9割近くを占め、「ほぼ毎日どこかが新製品を出す」と言われるほど激しい開発競争を演じている。一方、消費者の好みは移り気で「1年たって残っている製品は100に1つ」とされ、体力勝負の様相が強い。業界再編の芽は早くからあったわけだ。
日清と明星を合わせるとシェアが5割を超すことになり、独占禁止法に触れるとの見方もあるらしい。実際の提携までにはまだ曲折も予想されるが、実現すればカップめん主体の日清と袋めん主体の明星による「巨大インスタントラーメン連合」の登場となる。
チキンラーメンの発明以来、手にし得るインスタントラーメンはほとんど食べてきたと自負する身としては、今後の展開が大いに気になるところだ。職場の若い社員に尋ねたら「日清より明星のほうが味が濃い」「うどんみたい。ごはんと一緒に食べられる」といった評価が返ってきた。おおむね好意的な口ぶりだった。
個人的には、日清のフロンティア精神が好きで、洗練された日清の味が一番上だと思っているが、明星の野性味も失ってほしくない。明星「チャルメラ」=写真=は、ちょうど今年で発売40年。屋台を引き続けるチャルメラおじさんに「がんばれ」と声をかけてあげたい。