したたか欧米流

フランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」がきょうの午前零時から解禁になった。以前ほどやかましく言わなくなったが、それでも未明の試飲会には大勢の人が集まったというニュースが流れていた。
全世界で一斉に解禁されるという「ボージョレ・ヌーボー」だが、その49%までが日本で消費されると聞いて驚いた。さすが「初物を食べると75日長生きする」と言い習わされるお国柄、「初物」には弱いのだ。
輸出元のフランスには上得意というわけだが、本当のところはどう見えているのか。ルイ・ヴィトンなど日本国内でさんざん高級商品を売りまくりながら、自国内では日本人客の「買いあさり」をべっ視しているというから油断ならない。お目当てはニッポンの「円」だけということかもしれない。
「円」で言えば、米大リーグ・レッドソックスから西武の松坂投手に提示されたという60億円にも目をむいた。いくら実力主義の米社会とはいえ、よくもまあ、そんな金がひとりの野球選手に支払われるものだ。60億円は西武球団に入るもので、これとは別に松坂投手に対して年俸約10億円、複数年契約が提示されているといわれる。
球団にとって「戦力の補強」はもちろんあるだろうが、ビジネスとしての「投資」といった側面も指摘されている。日本の実力ナンバーワン投手が登板するとなると、傘下のテレビ局には当然、日本のスポンサーがたくさんCMを出すに違いない。イチロー、松井選手らとの対決ともなれば、なおさら盛り上がるはずだ。
なんのことはない。球場と所属球団が違うだけで、日本のオールスター戦を見ているようなものではないか。背景の球場フェンスには日本企業の広告がずらりと並ぶのだろう。球団は数年で「投下資金」を取り戻せると踏んでいるそうだ。
こう考えると、欧米流のビジネスはしたたかだとつくづく思う。お得意様を持ち上げるだけ持ち上げる一方で、ちゃんとそろばんをはじいている。新酒の味がどうの、日本球界がどうの、などと言っている間に、せっせとビジネスの世界で「おいしい」ところを持っていかれる。いつまでもほろ酔い気分で騒いでいる場合ではないのだ。