救急救命装置

東京のJR新橋駅に救急救命装置が備えられていると聞いて、出張帰りに駅の構内を探してみた。乗降客の波に紛れて見つからず、駅員さんに尋ねた。当の駅員さんも「ウーン、どこだったかなあ」と一瞬戸惑ったものの、一緒に歩いて「あそこです」と教えてくれた。
改札口を入ってすぐの柱に「AED」と書かれたオレンジ色の箱が取り付けられていた。正式には「自動体外式除細動器」。いかにも直訳的で、難しい名前だ。簡単に言えば、心臓発作を起こした人に電気ショックを与えてよみがえらせる装置である。
日本での病院外での心停止発生件数は年間2〜3万件とされ、交通事故死者の3〜4倍に上るといわれている。発作から1分たつごとに救命率が7〜10%下がるといい、すばやい対応が決め手になる。
AEDは従来、医師や救急救命士しか使うことが認められていなかったが、2年前からだれでも扱えるようになり、人の多い公共施設などで徐々に設置が進んでいる。取り扱いは、音声案内に従って電極を倒れた人の胸に張り付けるだけ。あとはAEDが自動的に心電図を解析して電気ショックが必要かどうかを判断、ボタン操作の指示を出す。装置を開けた時点でアラームが鳴るから、駅員も駆けつけてくれるはずだ。
数年前、友人の同僚も京都駅で不整脈を起こし、その場で亡くなったそうだ。もし、その時AEDが手近にあれば助かったかもしれない。そういう意味で、こうした機器が普及するのはよいことだ。
気がかりなのは、せっかくの装置も存在自体がほとんど知られていないこと。通勤で毎日新橋駅を利用している知人も全く知らなかった。東京ではすでに地下鉄主要駅にあるほか、今年度中に東海道新幹線全駅に設置される予定だ。装置の色や形、表示もバラバラ。この方面の周知宣伝にももっと工夫が要る。
  
 【設置場所によって色も形もバラバラのAED(左=JR新橋駅、右=東海道新幹線東京駅)】