ひげをそったMVP

日本ハムから巨人への移籍を表明した小笠原道大選手が、きのうの入団会見にトレードマークのひげをそって現れた。YGの帽子をかぶり、つるりとしたあごに手を当ててニンマリしている写真を見て、思わず松井選手(現ヤンキース)と見違えた。
球界の紳士」を自任する巨人では、ひげはご法度の不文律があるそうだ。小笠原選手は「新しいことが始まるのできっちりしよう」と、この日自宅でそったという。「心機一転」というところなのだろうが、意地悪く言えば、これまでは「きっちり」していなかったのか、とつい揚げ足を取りたくもなる。
別に「おひげさん」の肩を持つわけではないが、洋の東西を問わず、ひげは男性の身だしなみ、権威の象徴だった。古代ギリシャやローマでは知恵と成熟、男らしさのシンボルとされた。日本でも聖徳太子から水戸黄門明治天皇夏目漱石に至るまで、ひげでおなじみの顔はいくらでも浮かぶ。安全カミソリを考案した米国人、キング・ジレットも鼻の下に立派なひげをたくわえている。
猫の目は2〜8mしかよく見えないそうだ。そんな猫のレーダーになっているのがひげだという。子どものころ、猫のひげを切ったらネズミを捕らなくなる、と親から聞いたことがあるが、どうやら本当らしい。
日本ハムを44年ぶりに日本一の座に導いたMVP選手には失礼だが、どうぞ来季は「ひげをそった猫」などと言われませぬよう。よけいなお世話ながら「紳士軍団」での活躍を祈りたい。