竹邑庵太郎敦盛「あつもりそば」

難しい名前の店だ。「ちくゆうあんたろうあつもり」と読む。入り口に「そばハくすり」の看板が立つ。
名前の通り、いちおしメニューは「あつもりそば」。ゆで上がった熱々のそばをせいろに盛り、ひのきの箱に入れて運ばれてくる。ふたを開けるとパァーと湯気が上がり、そばの香りが立ち上る。玄そばのひきぐるみで、つなぎは山芋と卵。つゆは、かつおと昆布で取っただしに、ミネラルの多い黒砂糖を加えて甘口に作られている。ちょうしで熱かんのように温められているから、こちらも熱々だ。
山盛りの九条ネギと生卵、ワサビの入ったおわんにつゆを注ぎ、そばをつけて食べる。2斤頼むとおわんも2つ出てくる。そばはゆでて蒸されているから、いわゆる歯ごたえはないが、もちもちとしてそば粉の風味が楽しめる。メニュー自体はこの店の創作だが、歴史的には「そばがき」と「そば切り」の中間に当たる食べ方らしい。
甘辛いそばつゆが、ネギの辛みと卵のまるみにうまくマッチしている。東京のそば通あたりに言わせれば「こんな甘ったるい、のびたようなそば食えるかい」てな声も出てきそうだが、まあこれはこれ。新橋にも支店があるそうだから、案外江戸っ子にも受けているのかもしれない。
1斤(並)も1斤半(大)も同じ870円。2斤(特大)は1020円=写真=。他に、出石風の冷たい「追っかけ皿そば」(5枚870円)もある。京都市上京区烏丸通丸太町上ル西入。
  
 ★★★★(敦盛ならぬ熱盛りそば)