おせち料理

高価な「正月おせち料理」が売れているらしい。デパートやスーパーをはじめ、最近ではネット通販などでも花盛りだが、どこも予約好調という。
広告のちらしや画面を見ると、彩り鮮やかに盛り付けられた重箱が並び、目にも華やか。京都の高級料亭やホテルの名前を冠した豪華版には10万円を超すものもあるが、だいたい1人前1万円前後が通り相場のようだ。
景気回復もあるのだろうが、何よりも手軽で味も体裁もよいのが受けているらしい。わが家の正月は昔からお雑煮程度で、冷えた「おせち」はあまり好まない。年末の買いだめで正月から「すき焼き」や「かにすき」「うどんすき」といった鍋ものが多い。京都では異端派といってよい。
正統派は、親から子へ、しゅうとめから嫁へと継いできた家庭の「おせち」を作っているはずだ。しかし、昨今は核家族化や少子化でこうした「伝承」ができにくい家庭も増えている。種々の習わしとともに手作りならではの味が消えてゆくのはさびしいが、時代の流れというほかない。
なにも女性たちの料理だけではない。一家のあるじが「力」を見せつける「もちつき」だって、もうとっくに消えている。子どものころ、わが長屋では物持ちのお宅からうすやきねを借り、順番にそれぞれの家でペッタン、ペッタンやっていた。いつだったか、もちつきのイベントできねを振り上げたら10回もつかぬうちに息が切れた。わが家では、この正月もサトウの切りもちだ。