残業代ゼロ制度

近ごろ「ホワイトカラー・エグゼンプション」なる言葉が、新聞やテレビのニュースによく登場する。難しい専門用語や外来語は使わないはずなのに、どうしたことだろう。覚えにくく、なじみづらい言葉だ。
辞書を引くと「exemption」は「控除、免除」。直訳すれば「ホワイトカラー除外」となる。一定以上の年収がある会社員(ホワイトカラー)には労働時間の規制を設けず、出退勤を個々の裁量に任せる。労働の対価は時間でなく、成果で決める。だから残業代は払わない。米国などの企業社会で広く行われている制度だという。
仕事の遅い者が居残って残業代をもらう。時間内にさっさと片付ける者には、より仕事が多く回されるのに対価はない。どこの職場でも多かれ少なかれ見受けられる光景だ。こうした不公平感をなくし、仕事に取り組む意欲を高めようというのが本旨だろう。
といっても、事はそれほど単純ではない。制度をタテに「サービス残業」を強いられることにならないか。目に見える形で「成果」が表れにくい職種はどう評価されるのか。経営者サイドに支持が強い半面、労働者側が警戒するのはそうした心配があるからだ。
労働対価の「ものさし」づくりは難しい。春の統一地方選、夏の参院選を控え、政府も無理押しは避けるだろうが、ここは労使双方が論議を尽くして知恵を出し合うべきだ。あいまいな外来語に乗じて、いたずらに法案成立を急ぐべきでない。