笑いの品格

笑いにも「品格」がある。いまや伝説になってしまった上方漫才の名コンビ、夢路いとし・喜味こいしは舞台の上で決して「おれ、お前」を使わず「ぼく、君」で通した。口汚い言葉遣いや相手をたたいたりして笑いを取る近ごろの「お笑い」を厳しく批判していた。
年明けに放送されたバラエティー番組について、フジテレビが日本高野連から抗議を受けた。早実野球部が宿泊している西宮市の旅館で、タレント3人が選手の食事や部屋の様子を笑いのタネにしながら紹介する内容だったらしいが、その中身がお粗末すぎた。
新聞記事によると、疲労回復のために設置された酸素カプセルで、タレントの一人がわざとおならを繰り返し、視聴者の笑いを誘う場面まであったとか。この手の番組の低劣さは今に始まったことではないが、落ちるところまで落ちたというしかない。
当のフジテレビ広報部のコメントがふるっている。「抗議文を受け取ってから問題とされた個所の確認などを行いたい」。なんだ、フジでは他者から指摘されないと問題の所在も分からないのか。さすが「視聴率トップ」の局、お気楽なものだ。
高野連の怒りとは別に、最近のテレビ局の安易な番組づくりは寒心に堪えない。民放にとどまらず、NHK紅白歌合戦での「演出」もそうだ。視聴率狙いが悪いとは思わない。優等生ばかりの番組も面白くない。しかし「いと・こい漫才」のように、くだけても崩れない端正な姿勢がほしい。そうでないと、いずれテレビ局自体が「笑い者」になる。