消えたペコちゃん

「ペコちゃん」の首振り人形が、街頭から消えた。代わりに、シャッターが下ろされた店頭では「営業休止」の張り紙が寒風にさらされている。
洋菓子の老舗、不二家の不祥事が明るみに出た。消費期限切れの原材料使用、細菌を異常検出した商品の出荷、工場内でのネズミの大量捕獲…およそ食品メーカーとは思えない実態にあきれるばかりだ。
最もひどいのは、これらの事実を昨年11月の社内調査で把握しながら、報道されるまで消費者に一切公表していなかったことだ。折しもクリスマスケーキの需要期前。「発覚したら雪印の二の舞になる」と「口封じ」とも取れる文書が管理職に配られたという。
詩経』に「他山の石をもって玉を攻むべし」という言葉がある。「よその山から出た粗悪な石でも、自分の玉を磨くのに役立つ。他人の過ちを自分の戒めにせよ」との教えだ。
不二家の愚かしさは、雪印の「石」から「不祥事には迅速で誠実な対応が不可欠」と学ぶべきを「不祥事がばれたら会社がつぶれる」としか理解できなかったところにある。謝罪会見で経営トップが「コンプライアンス(法令順守)」なる言葉を口にした。いまさら何だ。
現場責任の糾明もさることながら、消費者を軽視し社益を優先させた経営責任は重大だ。商道徳の守れぬトップは潔く去るべし。