顔なし意見広告

きのうの朝刊で、1ページを使った特大の「意見広告」が目にとまった。「京都市民の皆様へ 京都市の新たな景観政策をご存知ですか?」
はじめ京都市の広報かと思ったが、よく見ると「あなたの家は建て替えができなくなるかもしれません」「京都市民を京都市街地から追い出すことが目的としか考えられない」…。いま京都市が制定を目指している新しい景観条例案に反対する「意見」だった。
広告主は「京都の景観法を考える会」。初めて聞く団体だが、京都市中心部に多い「うなぎの寝床」と呼ばれる狭小民家の特徴を挙げ、新条例案がうたう高さ制限や植栽義務、風致地区の拡大などの不具合を専門的な観点から具体的に指摘している。
広告には、会の電話番号やホームページのURLが書かれていたが、代表者や構成員は明記されていない。同僚が「事務局」の住所を調べたら、ある住宅建設会社の所在地だった。
京都の景観をめぐる論争は珍しくないが、えてして東京の学者や文化人から「京都はかくあるべし」といった意見が多い半面、実際に京都に暮らす人はなかなか声を上げたがらない。その意味で、こうした意見広告が広く論議を起こすきっかけになればと思う。
覆面をしたままの批判と言われては、会も不本意だろう。要らぬ誤解を招かぬためにも「身元」を明らかにして、そのうえで堂々と市当局と論を戦わしてはどうか。
 
 【写真=17日付『京都新聞』朝刊から】