「寅さん」完結

NHK−BS2で放送されていた映画『男はつらいよ』全48作が先週で完結した。足掛け3年、土曜夜の楽しみがなくなり、ちょっぴりさびしい。
寅さんとの「付き合い」は、学生時代にさかのぼる。シリーズ第4作「新・男はつらいよ」を見たのが最初だった。当時は難解で重苦しい映画が多かった。初めて寅さんを見て、こんなに面白い映画があるのかとたまげた。
封切り時に映画館で見たのと今回のテレビ放送分を合わせると、48作の半分以上を見たことになる。シリーズの制作期間は1969(昭和44)年から95(平成7)年の26年間に及び、わが会社人生の大半と重なる。あらためて、この作品のすごさを思う。
テレビ放映の最終回に山田洋次監督が出演した。マンネリ批判の中、会社側から「寅さんを結婚させたらどうか」と暗に路線変更を求められたこともあったという。監督は悩んだ末、こう思い定めたそうだ。「寅さんは、ラーメンと同じ。同じ味を同じように出すから客が来てくれる。味を変えたらおしまいだ」。
野球の一流打者でも、3回のうち1回ヒットを打てればいいところだ。毎回、安打どころか、本塁打を求められるプレッシャーは相当なものだったに違いない。「それが渡世人のつれえところよ」。寅さん十八番のせりふは、監督が自らに言い聞かせる言葉でもあったようだ。