恵方巻き

節分に太巻きのすしを食べるようになったのは、いつごろからだろう。そんなに昔からの風習ではないはずだ、と酒を飲みながら同僚と話していたら、横から戦中派の先輩が「いや、子どものころ、家で食べた覚えがある」と異議を唱えた。
先輩の実家は、京都・西陣の乾物商。彼の「子どものころ」と言えば、昭和30年前後。すでに節分に恵方(えほう)を向いて一家で太巻きの丸かぶりをやっていたという。
同じ上京で育ったが、父が友禅関係の職人をしていたわが家では、そんな習わしはなかった。恵方巻きを知ったのは、会社に入ってからだ。すし屋の軒先でポスターを見かけたり、業界団体の新聞広告を見たりして、実際に食べ始めたのはこの20年ほどの間だと思う。
恵方巻きの起源は諸説あり、定かでない。発祥は大阪らしいが、それも船場の商家説や遊里説などまちまち。時期も、江戸時代から明治、もっと下って戦前の昭和説もある。いずれにせよ、全国的には平成に入って大手コンビニが売り出して広まった。
わが家でも昨晩は、予約してあった恵方巻き3本で「招福」パーティー。丸ごとは食べにくいので切り分けて、恵方だけではなく全方位で、無言ではなくてにぎやかに…。お後は豆まき。後始末を考えて屋外でささやかにパラパラと。最後は、年齢の数をごまかしてボリボリいただいた。
ちなみに先輩の実家では「鬼は外、福は内」に加えて「大荷(おおに)は内」(大きな荷物はうちに)と豆をまいたそうだ。これも初めて聞いた。
 
 【写真=なじみの「味工房うえ川」の恵方巻き】