「太陽の塔」お大事に

大阪・万博記念公園の「太陽の塔」が古くなり、あちこちにガタがきているそうだ。建てられて37年、無理もない。当時大学4年で就職を前にしていた自分が、来年はもう定年を迎えるのだ。長年の現役生活で節々が痛いと聞けば、なにやら他人事とは思えない。
1970(昭和45)年。「世界の国からこんにちは」の音頭にはやされて、大阪・千里丘陵で日本初の万国博が開幕した。個人的にはさほど関心はなかったが、友人に誘われて半年の期間中に一度だけ会場へ足を運んだ。
米国の宇宙飛行士が持ち帰ったという「月の石」が話題を呼んでいたが、何時間待ちという長蛇の列にあきらめた。どこへ行っても人、人、人の波。歩き疲れて「太陽の塔」下のお祭り広場で、ぼんやりと民族音楽や舞踊を眺めていた記憶がある。
太陽の塔」は大阪万博のシンボルだった。岡本太郎の奇抜なデザインは、グロテスクに思えて好きでなかったが、その後も取り壊されることなく、いつしか名神高速道路の車窓風景として見慣れてしまった。大きな目玉をむき、両手を広げて立つさまは、大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」をいまなお愚直に主張し続けているようにも見える。
これまで補修でしのいできたが、壁面にも亀裂が走るなど傷みはかなり「重症」のようだ。近く内部に足場を組んで全面修復への「精密検査」を受けるという。この際じっくり診てもらい、また元気を取り戻してほしい。
 
 【写真=日本万国博覧会記念機構のホームページから転載】