景観条例可決

大山鳴動して、ネズミ1匹。きのう京都市議会で市の新しい景観条例案が全会一致で可決されたのを見て、そう思った。
「百年、二百年先の京都を見据えて」作られたという条例を「ネズミ1匹」に例えて悪い気もするが、事前の大騒ぎからすると、拍子抜けの感が強い。京都の景観について議論が深まる好機と期待していただけに、肩透かしに終わったのは残念である。
報道で見る限り、市議会での論戦は全く低調だった。反対派に支持者の多い自民党など与党市議が一時、条例成立を急ぐ市の姿勢に批判的な態度を見せていたが、いつの間にかトーンダウンした。最終日は委員会が未明までずれ込んだというが、それも付帯決議の中身をめぐるやりとりで、全会一致へ向けた「調整」の色彩が強かったようだ。
4月に選挙を控える市議諸氏にとっては、厄介な問題をいつまでも抱え込んでおきたくなかったのかもしれない。市当局がそれを計算して今市議会に提案したのであれば、作戦勝ちとも言えるだろう。
建物の高さ、デザイン、屋外広告…全国でも例のないという厳しい景観条例が、9月から施行される。違反者には罰則まであるというから、無関心ではすまされない。
桝本頼兼市長は「個人の財産は公共の福祉に制約されるのが世界の常識。ある程度の痛みは我慢してもらいたい」と述べたという。意気込みは分かるが、いやしくも百年、二百年先をうたう大計だ。「決まったのだから文句言うな」ではなく、今後、市民の十分な理解を得る努力を尽くしてもらいたい。