桜月夜

昨夜は、社内仲間との飲み会で祇園へ。雑誌やテレビでおなじみの新橋界わいは、白川沿いの桜が見ごろを迎え、平日ながら大勢の観光客やカメラマン、酔客らで大にぎわいだった。
巽橋のたもとでは強烈なライトが桜を照らし、人の目をひきつけている=写真①=。はやりのライトアップは花や木が眠れないように思えて好きではない。月明かりの下でかがり火に揺れる円山公園などのほうが風情あると思うのだが、いまやこの手の派手な夜間照明がどこでも幅をきかしている。
この夜の目当ては「桜ダイのしゃぶしゃぶ」。この時期は、タイのもっともうまい季節とされる。産卵期を控え、ピンク色に染めた体の中に栄養をたっぷりとため込んでいるのだという。
大皿に盛られて出てきた切り身は、名前の通り桜色=写真②=。座がパッと華やいだ。日本海産。桜ダイは瀬戸内産が最上とされるが、京都では若狭のものも多いそうだ。
刺身でもいけそうな身を鍋で軽くしゃぶしゃぶ。最初はだしで、次はだしにゆずコショウを溶いて、最後はポン酢で。ほのかに甘く繊細な旬の味わいをたんのうした。
桜ダイに夜桜、帰り道は雑踏を避けて人通りの少ない路地へ入った。ぬれた石畳に「都をどり」の赤ちょうちんが静かに影を映す=写真③=。絵に描いたような京の春宵だった。
「清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢ふ人 みなうつくしき」(与謝野晶子
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