おごるな都知事

手のひらを返す、とはこのことだろう。3選を果たした石原慎太郎東京都知事の発言だ。選挙前は「都政私物化」などの批判を受け「説明不足だった」と反省の弁を繰り返したが、当選するやいなや「一部メディアのバッシング(攻撃)だった」と高姿勢に転じている。
自ら3期目を「総仕上げ」としており、これでもう選挙に出ることはない。そんな気安さからか、選挙中の隠忍自重の反動か、そのトーンはこれまでにも増して高い。勢い余って「阪神大震災では自衛隊の派遣要請が遅くて2000人は死んだ」と言い及んだそうだ。
同震災の犠牲者は6434人。もし本当に都知事の発言通りなら、その3分の1近くが国や県などの判断ミスで亡くなったことになる。
兵庫県知事はカンカンだ。「多くは建物倒壊時の圧死。自衛隊の派遣と犠牲者の数には関連がない。いいかげんな議論で失礼」。いまのところ都知事側の再反論はないが、いずれどこかで耳にはさんだ話をもとに、石原流の誇大表現になった可能性が高い。
選挙で圧勝した高揚感は分かる。しかし、言ってよいことと悪いことがある。確たる根拠もない他府県の話より、石原知事にはもっと話すべき事柄があるはずだ。「説明不足」の反省はどこへやら、「都民の信頼が倍増された感じ」とこのまま幕引きの構えだ。
政策や政治手法について論じるのは大いに結構。ただ、いたずらに他者にほえ、かみつくだけではなく、節度と責任、誠意のある言動で280万の得票にこたえてもらいたい。