何が「天下り」だ

中央省庁による「天下り」のあっせん禁止を柱とする国家公務員法改正案が、国会に提出された。これまで省庁が独自に職員の再就職を世話していたのを改め、内閣府に新設される「人材センター」が一元管理するという。
天下り」という言葉さえ腹立たしいが、公務員が在職時のカオやコネを利かして利害関係にある公益法人や民間企業に潜り込むなどもってのほかだ。「優秀な能力と経験を生かしてもらえる」などと利点を挙げる企業や団体もあるが、多くは関係省庁とのパイプを強め、「貸し」を作って陰に陽に見返りを期待したいというのが本音だろう。
昨今の官製談合や公的団体の放漫運営を見れば、その弊害は明らかだ。本来、全面禁止するのが筋だが、公務員といえども再就職の機会そのものまで奪うのは酷である。「人材センター」が間に入り、あっせんの公正や透明性が確保されるのならば、一定の前進とは言えよう。
これに対して、さっそく霞ヶ関から不満の声が上がっているという。いわく「官僚の士気低下につながる」「年5000人もの再就職を担おうとすれば(人材センターの)人件費が増えて、大きな政府につながる」「参院選を意識した安倍政権の公務員たたきだ」…。
これが「高級官僚」の反応か。笑止千万。士気のうせた官僚は、さっさと役所から去るがよい。今後、法案審議の過程で抵抗や巻き返しも懸念されるが「骨抜き」を許してはならない。民間では、働きたくても働く場がないという人がどれほど多いか。政府は肝に銘じておくべきだ。