いまこそ汗を

警察庁が今月から、未解決重要事件の犯人逮捕に結びつく有力情報の提供者に最高300万円の報奨金を支払う制度をスタートさせた。第1次分として5つの凶悪事件が指定された。すでに容疑者の似顔絵が公表されているものもあれば、目撃者ゼロの事件もある。
容疑者情報を「金で買う」ことについては、警察庁の中でも異論が強かったらしい。「捜査員にもプライドがありますからね。だれでも、タマ(犯人)は自分の力で捕まえたいんです」。かつて、割り出した被疑者の写真公開を迫る当方に、京都府警の捜査幹部はそう答えた。
新制度の発足は、そんな誇りや見栄にこだわっておれないほど、昨今の事件捜査が行き詰まっているということだろう。近所付き合いが少ない、他人の行動や行為に関心が薄い…「地取り、足取り」と言われた聞き込み捜査の基盤が崩れているのだ。
30年ほど前、宇治で起きた幼女殺害事件でのこと。周辺取材に訪れた民家で、奥さんが「ご苦労さんです」と出してくれた玉露の味が忘れられない。いまは厳重なドアロックでマンションなどにはまず入れない。運良く入れても怒声とともにガチャン、がオチだろう。
だからと言って、一線の刑事には先輩以上の汗をかいてもらいたい。情報提供の呼びかけは呼びかけとして、自らの足で「無関心社会」に食らいついてほしい。ゆめゆめ「たなぼた」など期待してはいけない。こんな時代だからこそ、やりがいも大きいというものだ。その気概をなくせば、刑事も記者もおしまいだ。