特待制度

「いま正直に申告すれば、夏の大会には出してあげるよ」。日本高校野球連盟のそんな甘いサインを読んで、全国で376校が学生野球憲章に違反する特待制度を設けていたことを明らかにした。7971人もの球児が、その恩恵に浴していたという。
調査結果に、高野連脇村春夫会長は「数の多さに驚いている」とコメントした。本気でそう思っているのなら、よほど世事にうとい御仁に違いない。「特待制度は公然の秘密。高野連が知らなかったはずがない」とのプロ野球解説者・江本孟紀さん(元阪神)の見方が常識的だろう。
なにせ1世紀を超える日本の野球の歴史の陰で、徐々に根を広げてきた問題だ。論点は山ほどある。その中で引っかかるのが「他の競技は(特待が)許されているのに」という言い方だ。交通違反で検挙された者が「あの人だって」と不平を鳴らすのに似ている。
確かに他の競技にも「特待」枠はまま見受けられるが、その数といい、手厚さといい、野球は突出している。まして有力選手ともなれば、学校や指導者まで巻き込んで大学や企業、プロ球団が多額の金品による争奪戦まで演じるのだから、何をかいわんやである。
「選手がかわいそう」との同情論にも賛同しにくい。無知か、故意かは別にして、ルール破りの「特待」を当然のごとく享受してきた本人たちが、何でいまさら「被害者」だ。このあたりは、妙に沈黙している「日本プロ野球選手会」の面々にも、自らの経験を踏まえて、ぜひ見解を聞かせてもらいたいものだ。