農相遺書、公開を

きのう自殺した松岡利勝農水相は、8通の遺書を残していたらしい。各紙の報道によると、遺書は自殺した議員宿舎の自室内、机の上に置いてあった。封書が6通、便せん2通。いずれもボールペンによる手書きだったという。
封書は、安倍首相や農水省事務次官ら関係者あて。便せんは、1通が「国民の皆さま、後援会の皆さま」あてで、もう1通はあて名なしだったとされている。
個人あての遺書はともかく、引っかかるのは「国民の皆さま」あてのものまでが公開されていないことだ。あれだけの疑惑を残して逝った公人が、わざわざ「皆さま」あてに残した文書ではないか。当然、国民には読む権利、知る権利がある。
各紙の朝刊を注意して読み比べてみる。「国民の皆さま」(朝日、共同)、「国民の皆様」(読売、毎日、日経)と、あて名の表記がまちまちだ。文面も、自らの「不明不徳」をわびる内容は共通しているが、記述の順序などが微妙に食い違っている。
「という」「という趣旨の」などと伝聞記事であることをうかがわせる表現もある。どうやら各紙とも遺書の実物、ないしはコピーを確認していないらしい。捜査当局か政府筋かは分からないが、いわゆる「発表」に基づいた間接取材のようだ。
国民あての便せん1枚に何ほどのことが書いてあろう−とは思う。それでもなお、死を前にした現職大臣が有権者にどんな筆跡で、どう言い残したのか、全容を知りたいと思う。疑惑の渦中だ。自殺の動機も含め、よけいな疑念を招かないためにも遺書は公開すべきだ。