かんだやぶそば「せいろうそば」

創業1880(明治13)年、数ある「藪(やぶ)そば」の総本家とされる。
原点は、幕末の江戸で名をはせたそば屋「蔦屋(つたや)」。店の周りに竹やぶが多かったところから「藪そば」の通称で呼ばれたそうだ。蔦屋は明治後期に途絶えたが、その支店を譲り受けて「藪」ののれんを守ったのが「かんだやぶそば」の初代だった。
それまで庶民の間食だったそばを趣味性の高い高級な食べ物として売り出したのも、この初代だといわれる。素材にこだわり、時代に合ったそばづくりに努めたらしい。
そのひとつが、そばの色。夏でも食欲をそそるようにと、淡い緑色のそばを考案した。現在も健康に良いクロレラを練り込んで、この色を出しているそうだ。
名物の「せいろうそば」(630円、写真1)を注文した。そばは極細、うわさの通りすがすがしい色をしている。ほのかな香り、歯ごたえもある。つゆは藪系特有の辛口。
問題は、そばの量だ。はしでひとすくいしたら、もう底の蒸篭(せいろ)に行き当たる。3回すくえば、おしまいだ。2枚でやっと普通の店の1人前程度だろう。
板塀囲いで下町情緒を残す店構えは、東京都の歴史的建造物に指定されている(写真2)。門を入ると。美しい前庭が目を引く。石畳のわきにこぢんまりと植わる竹やぶが、名代ののれんの雰囲気を醸している。東京都千代田区神田淡路町

★★★★(情緒満点。量がお上品すぎる)