偽ブランド米

大阪の米穀卸会社がブレンド米を「福井県コシヒカリ100%」と偽り、販売していたとして警察の摘発を受けた。この会社の幹部は逮捕前、取材記者に偽装販売を認めたうえで、こう言っていたそうだ。「この業界では多かれ少なかれ、どの会社でもやっている」。
野球部員の特待制度で追及を受けた学校が同じような釈明をしていたが、こちらは日々口に入る食べ物だ。牛肉に端を発した食品偽装事件もまだ記憶に新しい。にもかかわらず、まだこんな言い逃れをする業者がいることを情けなく思う。
過当競争の厳しさは分かる。自らの味覚より「ブランド」信仰の強い消費者側にも問題はあろう。しかし、だからこそ業者には責任感と誇りが求められるのだ。
明治の初め、日本茶は生糸と並ぶ2大輸出品として隆盛した。積み出し港の横浜近辺には何百という釜を備えた製茶問屋が並んでいたそうだ。当時最大の市場は米国で、輸出茶の80%を占めていたともいわれる。
そのさなかに起きたのが偽茶騒動だ。日本茶なら何でも売れるとあって、一部の業者が粗悪茶はもとより、柳の葉っぱまで混入して輸出した。1883(明治16)年、米国は「贋製茶輸入禁止条例」を可決、米国民の日本茶離れを招く一因になったとされる。
不正を「他もやっているから」するのではなく「他はやっていても」しない、ぐらいの気概がなぜ持てないのか。でないと「日常茶飯事」の「飯」もかつての「茶」のように、いずれ消費者にそっぽを向かれる日が来よう。