きくや「カレーうどん」

「はい、カレーうどん」。テーブルの上に出てきたのは、底の浅い楕円(だえん)形の皿。カレーの中にスプーンが入っている。撮影用に下からうどんをすくい上げなければ、どう見てもカレーライスである=写真=。
うどんは細手。とろりとしたカレーあんは、だしがきいてやや甘口。器ほどのインパクトはないが、丁寧に味をととのえた「町のうどん屋さん」のカレーといった印象だ。
はしでうどんをつまみ、スプーンでカレーをすくう。スプーンがちりれんげでないところがミソだ。なんとも言えない食器のミスマッチが、ふだんのカレーうどんとは一味違う趣を醸す。
あんのとろみは最後まで残る。達人は、うどんを平らげた後、この中にごはんを入れて「カレーライス」として二度楽しむそうだ。
カレー煮込みうどんもあるが、こちらは普通の土鍋で出てくる。他に、めん類、どんぶり各種。
界わいは、かつて「東洋のハリウッド」と呼ばれた映画の町。近くの撮影所はいまもテレビ映画などのセットに使われている。店の客には、出演の俳優や制作スタッフ、テレビ関係者らも多いそうだ。
590円。京都市右京区太秦多藪町。大映通りの中ほど。

★★★(意外性も味のうち)