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やくざは、昔「八九三」と書いた。8+9+3=20。花札で下1ケタの「0」は「ブタ」と呼ばれ、一番弱い数字とされる。ここから「役に立たない」との意味で「やくざ」の言葉が使われたそうだ。
先日の新聞に、暴力団山口組総本部(神戸市)が昨年1年間に直系組長らから得た上納金は10億円を超えた、との記事が出ていた。前年より3億円も増えたらしい。山口組の直系組長は約90人。1人当たり毎月80〜120万円を総本部に納めているといわれる。
山口組の、その内部から吸い上げる金だけでこれだ。暴力団全体の総収入は年間1兆数千億円との推計もある。世界のトヨタが誇る年間利益に匹敵する金額だ。「役に立たない」集団が、どうしてこんな巨額な金を手にすることができるのか。
暴力団対策法の施行から今年で15年になる。「寄付金」「用心棒代」など金品の不当要求や地上げ行為など、従来取り締まりの難しかった「グレーゾーン」を禁止し、活動と資金の両面から暴力団を締め上げるのが狙いだった。
確かに日々のニュースなどを見る限り、表面的な暴力団事犯は減ったように思われる。暴力団顔負けの凶悪事件が多発していることもあるだろう。しかし上納金の増加は、根絶どころか、その活動が水面下に潜って着実に勢いを伸長していることをうかがわせる。
株主総会の季節。次々と出てくる企業不祥事の裏で、暴力団の動きが気にかかる。