吉本新喜劇

「じゃまするでぇ」。やくざ風の3人組がうどん屋ののれんをくぐる。店の奥から「じゃまするのやったら帰って」。「あいよー」。素直に回れ右して店を出る3人組。客席からドッと笑い声が起きる。
おなじみ吉本新喜劇の1場面。筋立てもギャグもワンパターンだが、客もそのワンパターンを待っている。
平参平のころだから、もう何年前になるだろう。ルーキー新一花紀京も懐かしい。テレビから流れる「ホンワカ、ホンワ〜♪」のテーマソングが毎週楽しみだった。
何十年来の吉本ファンとして、最近気になることがある。必ずと言ってよいほど劇中に「やくざ」が登場するのだ。地上げ、恐喝、借金取り…大声で悪態をついたり、殴るけるの乱暴も働くが、人情に厚く、最後はメデタシ、メデタシで幕となる。
目くじら立てる話でもないが、少々やくざが出過ぎではないか。大阪のホテルでも飲食店でも、こんな光景が当たり前にあるわけではない。劇は誇張や毒があるから面白いのだが、これだけ毎回見せつけられると、やくざに対する判断や感覚がまひして来ないだろうか。
吉本興業創業家と会社が、暴力団との関係をめぐって週刊誌ネタになっている。上場企業が恥ずかしい話だ。感覚まひに陥っているのは観客より、会社のほうかもしれない。
天下のヨシモトだ。やくざを出さなければ笑いが取れないこともあるまい。まずは、舞台からやくざにお引き取り願ったらどうか。「じゃまするのやったら出んといて」。