藪蕎麦「冷やしきつね」

「藪」を名乗るそば屋は全国に数多いが、ここの創業は1874(明治7)年。東京で「藪」の総本家とされる「かんだやぶそば」の創業が1880(明治13)年だから、それより古いことになる(写真1)。
4代目のご主人に水を向けると「以前は(東京の藪と)関係あったけど、いまはありません」。東京は東京、京都は京都、とでも言いたげに、あまり多くを語らなかった。
おすすめは「冷やしきつね」(600円、写真2)。冷たい「ぶっかけ」そばに刻み揚げ、大根おろし、ネギが入る。いまではコンビニの棚でも見かけるが、品書きにまで掲げる店はそれほど多くなかったはずだ。
そばは戸隠産の粉を使った機械打ち。少し辛めのつゆがきつねの油で甘味を加え、歯ごたえのあるそばとよく合う。涼味満点、これからの季節にぴったりだ。
オリジナルラベルの冷酒「藪」を置いている。醸造元は、生駒市の酒造会社でさっぱりとした飲み口。だし巻き、天ぷらなどの一品をアテに、江戸流の「そばの前に一杯」も楽しめる。
シャイな「職人」を思わせる大将と愛想の良いおかみさん。老舗にありがちな敷居の高さを感じさせない、街なかのそば屋さんだ。黒ごまを打ち込んだ「胡麻切りそば」も人気がある。京都市上京区西洞院通中立売上ル。

★★★★★(京都の「藪」はさりげなく)