祇園祭スタート

きょうから7月。1年の折り返しだ。「もう」か「まだ」か、の感じ方は人によって異なるが、マラソンで言えばドリンクを手にして息を継ぐ中間点にあたるだろう。
京都の7月は、祇園祭に染まる。祭事は、1日の「吉符(きっぷ)入り」から29日の「神事済奉告祭」まで1カ月に及ぶロングラン。平安の昔、疫病退散を願って始まったとされるが、これもまた暑い夏を前にしたリフレッシュのひとつと言えるかもしれない。
先日、亀廣永(京都市中京区)の「したたり」をいただいた。菊水鉾に献上され、町会所の茶席で使われる銘菓だ。
洛中名水のひとつ「菊水の井」に由来する菊水鉾は、菊の葉からしたたる露を飲んで700歳の長寿を保ったという能楽「枕慈童(まくらじどう)」をモチーフにしている。その不老長寿にあやかって作られたのが「したたり」だ。
寒天、水あめ、砂糖、黒砂糖を煮詰め、棒状に流して固める。なるほど、透き通ったこはく色が、清涼な菊の露を思わせる。口の中で崩れるような食感と上品な甘さが身上だ。宵山のころは、日に7千人分も作るというからすごい。
他にも「祇園ちご餅」(三條若狭屋)、「稚児の衣」(友恵堂)、「山鉾巡行餅」(鶴屋長生)など祇園祭にちなんだ菓子は多い。ほのかな甘みは心身をいやし、精気を養うという。故事をたずね、ゆかりの銘菓を巡る。祇園祭ならではのぜいたく、楽しみ方のひとつだ。
 
 【菊水鉾にちなんだ銘菓「したたり」】