「世界」めざす祇園祭

祇園祭が、ユネスコの「世界無形文化遺産」をめざしているそうだ。当のユネスコ文化庁が具体的に動いているわけではないが、地元の祇園祭山鉾連合会(京都市中京区)がいつでも申請できるよう資料の収集・整理など準備を進めているという。
世界遺産」といえば先月、島根・石見銀山がすったもんだの末に登録が決まったばかり。無理をして二の舞を演じなくても、と思ったが、この「世界遺産」とは別物らしい。
こちらは「世界遺産」に含まれない「無形文化財」が対象だ。01年から3次にわたって選定作業が行われ、すでに「オルロのカーニバル」(ボリビア)、「昆曲(昆劇)」(中国)、「シチリア人形劇」(イタリア)など90件が選ばれているそうだ。
本家の「世界遺産」より知名度はやや低いが、そのぶん風土に根ざした地域個性の色が強い。日本からは能楽人形浄瑠璃、歌舞伎の3件が入っている。
祇園祭は国の重要無形文化財で、日本三大祭りのひとつに数えられる。山鉾は古代中国の故事を題材にしたものが多く、装飾品には中世ヨーロッパ製の織物など美術的価値の高いものも数多い。歴史やスケールの大きさから見ても、上記の各国遺産にひけは取らない。
山鉾連合会は「あらゆる機会をとらえて祭りのステータスを上げたい」という。その意気やよし。それにしても文化遺産、新七不思議、無形遺産と「世界」に寄せる京都人の関心は高い。町衆ゆずりの誇りか進取の気風か、それともただの舶来好きか。